秘密基地のヴォイニッチ
今回ちょっと大作。
「ヴォイニッチ手稿」という手書きの本がある。知らない人には「何のこっちゃ」だろうが…これは、オカルトや不思議話の好きな人の間では有名な奇書。中身は、何語か分からない未知の文字の文章と、地球上には存在しない奇妙な植物、意味不明な裸婦の群れ、曼荼羅のような円…などの絵がびっしり230ページに渡って書かれている。1912年に発見され、以来100年間、様々な人間が解読を試みたが…まだ誰にも読めないらしい。現在は本の劣化を防ぐため、ある場所に厳重に保管され、実物を手にする事は出来ないようだ。その分、ネットに画像が公開されている。
その貴重本「ヴォイニッチ」を写し…しかも文章の「日本語訳」を書き込んだ人間がいたとしたら?
その時私は、やまくんの不思議体験の話を聞き取りしながら、たまたまネットでこの画像を見ていた。彼は子供の頃の秘密基地にあった謎のノートの話をした。そのノートの話というのが、なんか「ヴォイニッチ」に似てる気がしたので、冗談で画像を見せ「こーいうの?」と聞いてみた。そしたら…彼はあっさり「あーこれこれ」と答えたのだ。…え? これこれってなに?
話はこうだ。やまくん小学4年。一時いじめられてた彼も、その頃は友達と楽しくやっていて、よくある仲間内の「秘密基地」を持っていた。場所はただの資材置き場。積んである材木の隙間の空間に入り込んで遊んでたらしい。基地の中には、拾ったエロ本が数冊。(^^;)宝物やお菓子などは持ち込まず、エロ本も読んだら捨てていたようで、まあ基地というか「隠れ家」のような場所だったんだろう。何をするともなく、彼らはほぼ毎日そこに通っていた。
ある時雨が降った。その後日、やま少年と仲間が秘密基地に行ってみたら…中は汚れて泥だらけ。一応材木の天井はあるものの、防水まではされてないから、雨が染み込み放題だったようだ。ふと、誰かが見慣れないノートがあるのを見付けた。普通の、灰色の大学ノート。表紙は濡れたせいでボコボコになっている。めくってみると、途中から変な植物の絵などが20ページくらい、色鉛筆で描かれている。仲間たちはすぐ興味を失ったが、やま少年だけは植物に興味を惹かれ、しばらくそのノートを読み込んだ。絵の横には日本語で解説らしき文章も書いてあるが、やま少年にはまだ文が難しかったので、内容はあまり記憶がない。覚えているのは「めしべが4本」という一文だけ。彼は図鑑を写したものだろう、と思った。
だが無論、仲間の誰もそんなノートに覚えはない。…まずいぞ。ここに誰か知らない奴が来たらしい。見付かったんじゃ、もう使えないなあ… 彼らは相談し、結局その秘密基地は放棄する事になった。バレた秘密基地は秘密基地じゃないもんね。そんな訳で、やま少年はノートを置いて基地を去り、二度と戻らなかった。だからノートがどうなったかは分からない。
そして長い年月が経ち…ネットの画像を見て彼は「あーこれこれ」と思い出したのだ。だが考えて欲しい。やまくんが子供だったのはうん十年前。ネットなんかない。巷のオカルト話だって「幽霊はいるのか?」「エクトプラズム!」「UFO!」くらいのレベルで、口裂け女さえ登場してない時代。ヴォイニッチ手稿なんてコアなネタは、まだ日本人のほとんどが知らなかった頃だ。仮にノートがヴォイニッチの写しだとしても、そんな時代に一体誰が、何の資料を元に写したのか。データだって公開されていたか分からんのに。そして横に書かれていた文章が本当に「解読文」だとしたら、100年解けなかった謎をどうやって解いたか。…普通に考えれば有り得ない話だ。
だから。やまくんが「下手な植物の絵を、ヴォイニッチの絵と混同しただけだ」と誰もが考えると思う。子供の記憶なんて怪しいもんだと。でも、やまくんという人間を知ってる私には勘違いとは思えない。彼の記憶は感覚や映像を中心に働く。筋道立って論理的に話すのは苦手だが(だから、思い出を話させても要素がバラバラで、まとめるのが大変(^^))、その分、映像記憶には実に優れているのだ。それに元々オカルトが(恐いから)嫌いで、私が強要しなきゃ、絶対自分からそういう物は見たがらない。どこかで見て覚えていた…という可能性も薄いのだ。私は念のため、ネットに公開されているヴォイニッチの画像を全部彼に見せ、「この絵はあった?」と聞いてみた。彼はハッキリと「あ、これはあった」「これは無かった」「これは…不明」と判別した。リンクしていいかどうかだが…ここに貼っておく。
http://www.voynich.com/folios/
というページの
f2v f3r f3v f14r f18r f23v f37v f51r f67r(の左ページ)
これらは確かにノートにあったと言っている。…最近、「時空のおっさんの世界」でもよく登場する、重要そうな「中心に顔がある赤青白の太陽」の紋章もバッチリ入っている。(^^)彼の記憶に意味があるかどうかは不明だが、私は「めしべが4本」という文にすごく引っ掛かっている。…そんな植物この世にないと思うので。
追伸・なんでガキの秘密基地にそんなノートがあったのかも謎だが、当のやまくんはこう言う。「ノートを書いた人間は追われてたんじゃない? だから秘密基地にノートを放り込んで隠したんだよ。今まで誰も解けなかったんじゃなくて…実は解いた人間から消されてるんだったりして」…おおい恐いだろーが!
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