SFは何処へ行く
図書館から本を3冊借りた。3月に合併して我が町になる隣町の図書館は、とっても蔵書と設備がいいのだ。(地元は(^^)なのだ)借りても面倒になって、結局読まずに返す事もままあるが… 今回は結構真面目に読んでる。
「イギリス恐怖小説傑作選」南條竹則 編訳
…何故かフランスの短編が1本混じってるが、それ以外はタイトル通りの内容。1本が短く読み易いし、古き良き時代の古典的な名編が多く、「恐怖」というより心安らいでしまう。縁も英語力もない癖に、私はなんかイギリス調が好きでねー。本宅「生玉荘」の載せたウエルズの短編も、序文で簡単に紹介してあった。本に載っているのは別の短編だが、序盤お笑いに見せかけておいて、怪奇に落とし込む手腕はSFや文明批評より、ショートショートが本領では?と思わせる。現代の作家ならもっとオチをひねり回すだろーけどな。イギリス的硬質さと短絡さは、神経に余計な負担が掛からなくていい。
「謎解き 少年少女世界の名作」 永山靖生 著
2003年発行なので、めっちゃ最近の視点で書かれている、名作児童文学の新解釈。(内容に雪印事件が引いてあるし)「小公子」を橋田ドラマに譬え、「主演はえなりかずき」というのには笑いました。(そんなセディは見とないが)あと、「宝島」を日本で始めて翻訳したのが「海底軍艦」の作者とか、思わぬトリビアが含まれていて面白い。ピーターパンの項で「永遠に成長しない子供とは死んだ子供」という指摘には… 上記の怪奇物より背筋に走るものがあった。
「ディアスポラ」 グレッグ・イーガン 著
はあどSF。まだ読み始め。イーガンは近代の情報化社会をちゃんと正統派SFにできる、出来た作家なので、難しいが勉強のためにぽちぽち読んでいる。この世界では太陽系内まで制覇したシステムとソフトがあって、純粋にソフトのみの生んだデータ人格が「市民」として生活している。そう… 私の書いてる小説(^^;)も設定が似ているが。(^^;)とーてーこんな、分子生物学と情報工学を混ぜたよーなハイレベルなものは私には書けましぇん。そこまでする気もないし。ただ、自分の視点として誇れる部分は「そーは言ってもやっぱり、経済原理と主導権争いを軸にしてしか文明は発達しないだろう」という確信が根底に有ることだけだ。「こんぴうた」をそれだけ敷衍させて継続維持する事に、じゃー誰が何の利益を当て込んで資本と人材を出すのか?…単に「これが人類の進化」だから行動するほど人類は純粋ではないぞ。そう。たとえば…
ラ○○○ア事件のように。数字だけで実体のないものは暴走する。そして暴走し始めたシステムは、その数理的法則が回転する限り無限に止められなくなる。この恐ろしさ。イーガンは頭のいい作家なので、その辺の解釈もちゃんと作品中に入れているが、数学なものがどうやって現実の「人間的」心情と絡んでいくのか… そこが問題。これから全部読んでみないと分からない。でも、そーいう事が時代のこれからの課題じゃないかと思うんだな。なんたって、人類のうちの大多数は数学苦手なのだ。(^^;)私だけではなく。
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