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2007年7月 3日 (火)

戦争を知らない中年たち

これは、例によってあまり頼りにならないうちの母親に聞いただけの話である。信憑性の程は分からない。私の爺様、つまり祖父は戦時中に教師をしていたそうである。教師の立場ゆえか戦争に反対し、牢に入れられた。当時はこういう国家権力の横暴で亡くなった方も多くいた。しかし、じさまは無事生きて出て来た。

私がそのじさまのいる田舎にあずけられた時、じさまはいつも黙りこくって、時々爆発する恐い存在でしかなかった。家は女系で親族は女だらけ。その女性の家族からは、「じいさんには苦労を掛けられた」という愚痴ばかり聞いた。命懸けで戦争に反対した立派なじさまを尊敬してる、という話はあまり出なかった。家族にとっては誇りというよりはリスキーな存在だったのだろう。田舎にひとりであずけられ、玩具もろくに持ってなかった子供の私は、ある日、つまらないので家の中の物を散らかして遊んでいた。突然、恐いじさまが部屋に入って来て、私の置いた温度計(部屋にはそんなもんしか無かったんだね)を踏んだ。バリッ。当然温度計は壊れた。私は「あーーー」と叫んでじさまを見た。「あたしには物を壊すなって言うくせに、自分が壊したー」という目つきで。もちろん、どう考えても散らかした私が悪いのである。しかしじさまは私を叱らなかった。何かぼそぼそ呟いてそのまま部屋を去っていった。

それから、何故かじさまが私に優しくなった気がした。運動会の時、カブ(懐かしいスクーター)で学校まで送ってくれると言い出した。そんな事してもらうのは初めてなので、面食らった。祖父と孫は二人乗りで、田んぼの側の道を走り出した。しかし、慣れない事はするもんじゃない。途中でカブは転倒し、祖父と孫は田んぼに転がり落ちたのだった。まあ、無傷だったけど。

私とじさまの心の交流の記憶なんてそんなものである。中学くらいの時に脳溢血で亡くなってしまった。じさまが戦時中にはどういう人間で、どう生きたのか、もはや私には分からない。ただ…いま思い返すと。戦争の時代、戦争に反対する人間は憲兵に連行されたのである。それを何故憲兵が知るのかというと、近所の誰かが密告するのである。そう。戦時中の庶民の大半は決して正義ではなかった。日本が国連を脱退した時、大拍手したのも庶民だった。大戦開始を、提灯行列でお祝いしたのも庶民だった。(情報操作されていたとはいえ)だからつい考える。今、「核はしょうがない」発言を非難しまくっている世間の人たちは、「核に反対すると連行される時代になっても、やはりそれを言い続けられるのか」「近所を密告して自分だけ助かろうとは絶対にしないのか」…と。世間が騒いでる時に尻馬に乗るのは簡単な事だ。だが、政治家が悪くて自分たちは善良、という顔をする庶民も、私はそれ程清廉潔白ではないように思える。貧乏な庶民の気持ちが分かるかのような、稼いでる権力者が許せないような発言を繰り返すニュースキャスターのギャラは幾らなのだろう、と考えるのと同様に。

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コメント

面白い現象がありまして。
「日本が悪いから核を落とされたのだ。それはしかたなかった
じゃないか」
と普段主張してやまない方々がマスコミの切り張りをした編集
発言(マスコミがよくやる手法ですね)の尻馬に乗って政府を
非難しているんですね。
ま、どこの党とは言いませんが。

普段の主張を棚に上げ、とにかく叩きたいのがバレバレで白け
る事この上なしです。普段の主張と合致しているのだから、ど
うせなら誉めろよと思いますがね。

慰安婦問題にしても最大野党は沈黙せよと言っている。(ただ
し、一部議員は米の新聞の意見広告に名を連ねていますが)
国際社会では沈黙は認めたということですから、当然反論しな
ければいけないのに何をしているのやら。
自民を中心とした議員が米下院に抗議しているようですが、当
然ですね。むしろ、自民党のその場しのぎの判断が原因の一つ
だったのですから、きちんとやってもらわなくては困ります。

ああ、早くまともな与野党による政治が実現しないかなぁと思
うのですが日本では高望みなのでしょうか。

ま、利権やらいろいろあるんでしょうが、日本人のために最大
多数の最大幸福を追求すること。これをやってかつ景気が安定
していれば他に望むものはないと一庶民としては思ってしまう
のです。

投稿: 茜杳 | 2007年7月 3日 (火) 03時40分

茜杳様・
「普段の主張」が何なのかサッパリ分からない党、というのは謎です。政党というのは同じ理念の元に結束した団体の筈だから。とにかく与党が嫌いだから批判票、という人が必ずいるけど、じゃあ入れた党を支持しているのかというとそうでもなし。そういう支持の仕方も変なものです。

今、一番庶民の生活を圧迫するのは、政権の横暴より環境の悪化でしょう。悪い環境とは少子化、自然破壊、企業の利権主義等。そういう「マイナス要因を政治が止められるかどうか」が肝心だと思います。

投稿: いくたまき | 2007年7月 3日 (火) 09時24分

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