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2007年7月 3日 (火)

核のおさらい

もうこの話題から離れたかったんだけど…一応。どっかの大臣、とうとう辞任する騒ぎとなった。多分本人、本当に何の気なしに「しょうがない」と言ったのだろう。およそ核に関する事を(しかも防衛大臣の立場で、しかも長崎出身で、しかも選挙目前で)何の気なしに言えてしまう、この壮絶な鈍感さでは仕方ない事か。しかし正直私も、冷戦終結以来「本当に核戦争の起きる時代はもう来ない」と安心し過ぎていた気がしたのである。核戦争は起したくない、と本気で考えているのは大国だけ。(それだって本気かどうか)むしろ今、発展途上国は持ちたくて持ちたくてウズウズしている国が多い。そう考えると、核戦争の危険度は冷戦時代の比ではないのだ。核の危機について改めて考えさせてくれたという点で、今回の騒ぎにも何か得る所はあったかも知れない。

まず ①日本が「核はしょうがない」と発言する事が、なぜそんなに危険か。前々回の記事に書いたが、日本は世界唯一の「戦争における現実の被爆国」である。(核実験とか原子炉の事故は除く)その日本にも、昨今は「核武装すべき」という意見が出始めている。悲惨な被害に遭ったからこそ廃絶を目指す、というのが一般的な考えだが、核があれば攻撃を受けない、被害に遭ったからこそ持つべき、という過激な発想もある事は事実だ。そういう微妙な情勢で「しょうがない」と投げた発言をすれば、捻じ曲げれば「日本が核を持った時、敵となった国は撃たれてもしょうがない」とも受け取れる。またそうではなくても、「被爆した国家さえ核兵器の有用性を認めているぞ」と、持ちたくて仕方ない国に核製造の口実を与える可能性もある。どちらにしろ、世界の非核化には大きなマイナス効果しか与えない。北なんか大喜びかも知れない。

次に ②核兵器と通常兵器はどこがそんなに違うのか。普通の武器を持っているなら、その延長線上で核を持ったって…という甘い考えがある。それとこれとは別の物だ。なぜなら、ミサイル等は(だからいいとは言ってないが)基本的には「敵軍」を倒す為のものだ。非戦闘員のいる普通の領土に撃ち込むのは最大級の悪であり反則である。が、核ミサイルで軍隊を狙う事はない。核は明白に「国土の破壊と住民の殺戮」を目的とした兵器である。その広範囲な破壊力は決して非武装の人間を避けていかない。そして…何よりも放射能の恐怖がある。ウランの半減期は45億年だそうだ。地球が出来てから現在までくらいの長大な時間が経過して、やっとその放射能は半分になる。つまり、人間のレベルから言えば「放射能は絶対消えない」と考えても同じだという事。劣化ウラン弾ですら恐ろしい被爆が起きるのはご存知の通り。(知らない人います?)そしてその処理方法といったら、これは原子力発電の廃棄物の場合だが、コンクリで固めて地下に埋めるだけ。ただ燃えた物はどければいいが、汚染された物は触る事もままならない。ロケットで宇宙に打ち上げる方法でも開発されない限り、これ以上汚染物質を地球にばら撒くべきではない。(…ロケット墜落したりして…)(…うっかり宇宙人の船にでも当たったら宇宙戦争に…)

そして ③発展途上国が核を持つ事はいけないのか。いけない。これには異論のある国が多くあるだろう。でも私個人の意見として端的に断言するが、絶対いけない。じゃあアメリカやロシアが持つのはいいのかと言うと、もちろんそれだって良くはない。しかし、彼らには冷戦時代の経験というものがある。冷戦時代は、世界は本当に一触即発の状態だった。核のボタンを押す→世界のオワリ、というギロチンが地球の上にぶら下がっていた。だから、大国は核ミサイル発射までに何重ものセーフティを掛けている。発射命令が下っても、何人もの承認や工程を経なければボタンは機能しない。(…最近はどーなのかな、とも思うが)しかし、核持って大喜びしている発展途上国がそこまでの気遣いをするだろうか。下手するとボタンにはガラスのカバーすらなく、剥き出しかも知れない。しかも発射権限を握るのが軍だったりする。将軍がミサイル発射システムの視察に来る。うっかりつまずいてヒジを突く。「あっ押しちゃったぁ」…世界オワリ。絶対無いと言い切れるのか。じょーだんではない。人間、持ってる玩具はいつか使ってしまうのである。持たないに勝る安全はない。

と、他にも色々言いたい事はあるけどこの辺でやめておきます。どこかの大臣のみならず、世界中の人と国家にもう一度「核は恐ろしい」という事を改めて認識して欲しいと思った。特にどこかの日本の同盟国には。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

北朝鮮が核にこだわるのは、アメリカと対等に渡り合いたいかららしいで
すが、実際、ここまではアメリカはいいように振り回されています。
たとえば、http://www.cnn.co.jp/world/CNN200707030005.html
のような。

さらに2012年アメリカ軍は韓国から引き上げます。韓国が対北宥和政策を
続けるならば、東アジアの前線は日本海になったりして。

どーする?どーすんのよ?日本。
個人的にはアメリカの顔色伺いながら生きるのも何だかなぁなのですが。

投稿: 茜杳 | 2007年7月 4日 (水) 01時01分

茜杳様・
日本は「アメリカの核の傘に守られてきた」と言われてますが、北への弱腰なんかを見ると、逆に「いざとなってもアメリカ、色々理屈を付けて何もしないんじゃないか」という気がします。どうせ守られてないなら、顔色を伺う事もないです。だからって、今この状況で日本が自立(?)して核なんか持っても、周囲からの非難の集中砲火は必至。中国とロシアが手を貸したら最悪。戦略的にもいいとは私には思えません。むしろ核を持たない代償に、諸外国の常識を超えないレベルで、通常兵器による国防を充実させた方が無難ではないかと。専守防衛で。戦争のためでなく警備のために。

韓国では今、脱北した人たちが社会に適応できなくて問題になっているそうです。宥和政策といっても、国家の思惑通りには進まないでしょう。(ドイツが中々うまくいかなかったように)あとは将○様に、砂糖と油と塩分のたっぷり入ったご馳走をプレゼントし続けて…(ここ、読まなかった事にして下さい(- -;))

投稿: いくたまき | 2007年7月 4日 (水) 01時59分

つらいけど、ここは「殺されても、殺さない」を、国是として貫くしかないと思います。核ミサイルを打ち込まれても、日本人全員死滅は不可能だし、死滅するほど核を使ったら日本列島は利用価値がなくなります。狂気に対抗するのに狂気の武器を以ってしたら、いつまでも終りがありません。政治家は腹をくくって国民に説明すべきだと思います。

投稿: 志村建世 | 2007年7月 4日 (水) 11時13分

志村先生・
核を持たない限り、核は絶対抑止できないのか。私はそんな事はないと思います。その為には外交力、国家の信頼性を高め、核廃絶へのリーダーシップを取ることはもちろん、具体的に核ミサイルを迎撃する、もしくは戦略的に撃たせない方策まで考えておくべきでしょう。どこかの国が現実に核兵器を行使した場合の国連の強力な制裁法も必要かも知れません。核は「やられちゃった」で済む兵器ではないし、「持てば済む」という兵器でもありません。(そう考える方が楽なだけで)政府はむしろ、「持たない代わりに他国にも撃たせない」事を約束すべきではないでしょうか。

(蛇足・国が好きに撃ち合って、生き残った人間がどうこうするというなら、当然人口の多い国が有利になります。現に中国は「だから我々が有利」という発言をしているようです。そんな核後の時代が来たら、人類が反省して今度こそ平和を目指すとは到底思えないのですが。)

投稿: いくたまき | 2007年7月 4日 (水) 11時57分

北朝鮮と韓国は合併しないでしょう。
口では民族統一を言っていますが、韓国は最貧国レベルに落ちま
すから本音では望んでいないでしょう。
アメリカは核拡散さえしなければ朝鮮半島はどうでもいいのでしょ
うし、中国も水資源や港などの権利を買いあさって衛星国にして
いますから厄介ごとさえ起こさなければ現状維持で問題ないと思っ
ているかもしれません。
で、北朝鮮は各国の思惑の隙間をぬって恫喝すると。

アメリカも空気読めないようで…。
http://www.nhk.or.jp/news/2007/07/04/k20070704000069.html
確かに従来からの公式見解ですが、今言ったらダメでしょ。
というか、わざわざ質問する記者もなんだかなー。
日米離反の工作員(笑)でしょうかね。
ぶっちゃけ離反したいところですが、だからと言って中国、ロシ
アに付くのも嫌だし。自主独立も無理だし。
「しょうがない」ってとこでしょうか。

横からすみませんが、志村さん、すごいブラックジョークですね。
「あなたに死んでもらうことになるけど、票をくれ」
って、うーん、嫌な政治家だな…(笑)

投稿: 茜杳 | 2007年7月 4日 (水) 20時44分

茜杳様・
辞任した方も、アメリカを訪問して怒られて、簡単に洗脳されちゃった、という所でしょうか。困ったものだ。

で、北の方はまたゴネてるようですが。何も持ってない癖に、これだけ色々引き出せる交渉力は大したものです。悪事は許しちゃ駄目ですが、強気と度胸くらいは日本も見習った方がいいかも。

投稿: いくたまき | 2007年7月 4日 (水) 23時32分

単純に選挙前だからということでしょう。
与党の失点を騒ぎ立てれば勝てるという思惑が働いているのではないかと。
妄想逞しくしてみますと、このQ間さんは少し前に「日米安保は大丈夫
なのか?」と防衛大臣としてアメリカに問うていましたから、邪魔と思っ
た方がいたのかな?と。まあ、妄想です。
結果的には
「日本はアメリカの原爆投下を決して許してはいない」
というメッセージになったのですから、それはそれでいいかなとも思います。
下院外交委員会の慰安婦決議もあって、アメリカ政府は頭が痛いでしょうが
それはアメリカ自身の問題です。また、日本は孤立したくても世界が孤立さ
せてくれませんし、(一部マスコミは孤立させたくてしょうがないようです
が)歴史認識の問題で条約が崩れるのなら法も何もあったもんじゃありませ
ん。

北朝鮮がまた何か言ってるようですね。
「先に石油よこせ」
「日本を6者会合から外せ」
石油のほうはゴネが通ったようです。提供するのは韓国ですし北が約束を守
るわけありませんから、こんなものでしょう。
日本が6者会合から外れるのはむしろ好都合かもしれません。
どっちにしろ拉致の進展がない限り、日本は何も出しませんし、粛々と経済
制裁を続けるだけです。裏を返せば拉致問題による経済制裁が効いていると
いうことなのでこの路線で良いというサインですね。
http://www3.nhk.or.jp/news/2007/07/05/d20070705000027.html
で、言ったのはいいですが上のように6者会合で一番存在感のないロシアに
怒られると。うーん、なかなか日本を孤立させてくれないなー。6者会合自
体、茶番で時間稼ぎでしかないから外れてかまわないと思うんだけどなぁ。

北朝鮮方式の瀬戸際外交のマネはちょっと無理ですねぇ(笑)
一番大切な「信用」を失いますから。あれは失うものがないからできるやり
方ですし。(それでも核の後ろ盾は必要で、だから核を持ったのでしょう)
外交もやはり民意でしょうかね。
無関心だとどんどん他国に侵食されますから国民が意志を示すことが大切だ
と思います。そうすれば安心して政治家も官僚もできる範囲での強気と度胸
で他国に主張できると思います。

投稿: 茜杳 | 2007年7月 5日 (木) 20時28分

茜杳様・
突然ロシアが日本をかばっているのですか。何故かなー。「お金掛かるんだから、そのうち日本もカンパしてよ」の意味?

経済制裁を続けるのはいいとしても、あまり時間が掛かると、家族会の方々が疲れてこられるのが心配な所です。

アメリカは原爆の非人道性を認めてしまうと、大戦後の偉そうなリーダーシップの根拠が瓦解してしまうので、(実質もう瓦解してるけど)意地でも表立って反省は出来ないでしょう。本音の部分で利益主義に走らず、信頼を守ってくれるならいいのですが。大戦や核に関しては、あまり過去を持ち出すと必ずこじれるから、「その行使で現象として何が起こるか」「未来の安全保障に何が必要か」を中心に考えた方がいいと思います。かなり強気になっても、日本は口ではまだまだ言い負けそうです。

投稿: いくたまき | 2007年7月 5日 (木) 22時00分

いや、もうロシアだけでなくアメリカも中国もお金目的で日本を
引き入れてるんじゃないかと思いますよ。というか、ロシアが何
しに来ているのかが今一わからなかったりします。某掲示板では
「ウォッカ飲みに来てるんじゃね?」
と揶揄されているのですが(笑)

しかしながら
「拉致が進展しない限り、日本は何も援助しない。援助するとし
ても核の調査等を目的とした人的援助である」
と日本政府が言い切っちゃいました。
アメリカのヒル国務次官補が日本に
「拉致の進展とは何であるか」
と訊いていたようですから、お金出させる気満々だけど困っては
いるのでしょう。韓国は…貢ぐ君だからなぁ…。
拉致被害者家族会は確かに大変だと思います。ただ、家族会が経
済制裁を望んだのですから、腹は据わっているでしょう。
拉致問題でブレたら現政権は吹っ飛びますから、日本としてはこ
のままの方針でしょう。

アメリカの勘違いな正義は困ったものです。
ご指摘の
>リーダーシップの根拠が瓦解してしまうので
というところはその通りだと思います。
過去を正視すると自我が崩壊するので勘違いな正義を強要するこ
ともあるのでしょう。
アメリカについては、今後、民主党政権になった場合、またあの
80年代初頭の日本叩きのようなことになりはしないかと不安では
あります。ただ、当時とは違って中国の経済的台頭がありますの
で、米中でスーパー301条でも何でもいいから仲良く喧嘩してく
れれば日本は煩わされないですむかなという希望的観測というか、
願望があるのですが、甘いかなー。…甘いよな。

将来の安全保障については在日米軍を(言葉は悪いですが)人質
としてどうにかできないかを含めて、冷徹に考えていって欲しい
ですね。
逆に言えば、在日米軍が日本から引くような情勢になった場合、
不本意ながらも「核の保持を議論する」くらいの悪知恵は働かさ
なければならないでしょう。

投稿: 茜杳 | 2007年7月 6日 (金) 23時44分

茜杳様・
米軍が日本から引き上げる…のは相当の事です。どういう情勢なら有り得るのか、ちょっと具体的にイメージできないです。でも大きな態度で臨むのは悪くないかも。「いまだに進駐されてる」「守ってもらっている」のではなく「協力してあげている」という意識で。あまりに言い成りに米軍の動きを擁護するのは問題があると思いますので。

中国などは今、大変な経済発展を遂げてますが、パラレルワールドでの(規模や文化の違う)「日本の高度成長」の再放送を見てる感じもします。同じになるとは言えないが、日本のバブル崩壊に相当する時期も来るでしょう。その時、国際情勢がどう激変するかはまだ読めません。私は、最強の安全保障は兵器でなく経済になっていく気がします。「この国が潰れては困る」という存在になれるかどうか。まあ、できれば核を持つ事自体考えたくはないです。軍事で勝る国家がいかに傲慢になるか、見せつけられてきた側としては。

投稿: いくたまき | 2007年7月 7日 (土) 13時48分

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