卓球おじさん帰る
コキントーさん帰ったようです。しかし、「友好仲良し!」でしめたかった割に抗議活動はあるわ、パンダいらないとか言われるわ… 公の舞台以外では皮肉な反応が多かったようで。本当なら凄く進展した日中関係!というシナリオだったんだと思う。確かに、コータクミンさんの時は頭から敵対姿勢、宮中晩餐会に人民服で出席し、天皇陛下の前で歴史問題を言いたくる…という恐い展開だったそうだから、10年で180度姿勢が変わったのは間違いない。大した事と言えば大した事。まあ以前から海賊版の問題とか領海問題とか色々あったけど、ギョーザとチベットさえ無ければもう少しこの訪日は評価されてたんだろうな。…しかしこういう展開ですから。ここしばらく中国に関するニュースは呆れるような酷いものばかりで。テレビしか見てない庶民としては頑張ってとも言えない。
でも、主席の正式な訪日に対してそこまで抗議活動するのは、正直どうかと思った。聖火通過の時パフォーマンスするのと意味が違うからな。聖火に対してなら「その政策に抗議」くらいの意味だが、主席に直接抗議するのは「国家自体に抗議」という意味になる。でも、なんたってこの間まで世界中でこの騒ぎだったから、みんなマヒしてますね。「あーまたやってる」くらいの軽い認識。ちょっと聞きたいのは、この抗議活動「ブーム」はいつまで続くのかという事。本気でチベットを心配してるのですか?オリンピック過ぎても多分政策は変化してないと思うけど、それでもやってます? あと、「フリーチベット」とはチベットに高度の自治を、という意味なのか、それとも独立をと言ってるのか。それとこれとは深刻に違うぞ。
ダライ・ラマさんは賢いので、決して「独立を」とは言わない。ちゅーごく政府がそこまで認めるには、今の国家を解体するくらいの動乱がなければ不可能だと分かってるからだ。それに、あんな状況の危ない国々に挟まれまくった地形で…武力を持たない国が自治を維持できるものか。「日本人には、他国が地続きという恐さが分からないのだ」という意見がどっかにあったが、それが正論だと思う。危ない事は中国に任せ、権利だけ保護してもらう方がチベットにはいいだろう。それに、別にチベット問題は今年突然起きたのではない。あちらも長年やってるのだ。北京オリンピックに合わせて大騒ぎにしたのも、かなり計算の上だ。しかもその作戦はアピール効果、という面で大成功を収めてると言っていい。今年がオリンピックでなければ、ちゅーごくがあれ程ギリギリに締め付けている報道管制をすり抜け、ここまで情報が流れたろうか? くどいようだがダライさんは賢い。実は策士で、成り行きの行動はしてない筈だ。ただ人がいいだけの爺さまでは、あんな「生涯亡命」みたいな辛い立場で耐えられる訳がない。そしてその賢さを知ってるが故に、ちゅーごくもあれ程敵意を持つのではないか。…でも、自治でいいと言ってるのに、訳の分かってない極東の人間が「可哀そうなチベットを独立させよう!」と訳の分からない熱血を始めるというのは、多分ダライさんも計算外だったろうな。
あと「人権問題」というのを、日本人は多分誤解している。主に「言論の自由や労働の権利の平等」の事だと思ってるんじゃないか。それもそうだが、私はチベットにとって最も重要なのは「信教の自由」だろうと思う。もちろんこれも基本的人権だ。昔、フジワラシンヤの本を読んだくらいで(^^)私も多くを知るわけじゃないが、あそこの文化、というか生活、人生の全てが本当にチベット仏教を中心に成立していた筈だ。そういう場所で宗教を否定されては全てを失ったと同じ。況や「金持ちになれるならチベット仏教捨ててもいーや」という人間がもし多発したら…たとえ「他の人権」が全て保護され、チベット人がみんな金持ちで自由になったとしても、それは確かに一つの文化圏の消滅なのだ。ダライさんが主張してるのはそういう事だ。単に銃で撃たれる犠牲の事を言ってるのではない。ところが、共産主義は何故か絶対に「宗教否定」だ。何故かは良く知らない。旧ソビエトだってペレストロイカの前までそうだった。だからちゅーごくが「信仰の権利」を認めるのは、完全に共産主義体制を解体し、民主主義国家になった時以外有り得ない。…つまり、一見ただ普通の権利を求めているようで、実はこれは遠回りな革命なのである。「チベットの信仰の自由を認めろ!」と主張するのは、「ちゅーごく、お前共産主義やめろ!」と言ってるのとイコールなんだよ。だからオオゴトなの。書き込みや抗議の映像を見てると、この人達ほんとにそこまで理解してるのかなー…と思う。ちゅーごくが「内政干渉だ」と怒る理由もそこにある。今流行ってるからって、ストレス解消にノリノリで参加してる人は、実はそこまで深刻な革命に参加してるんだという事を自覚してやった方がいい。
まあ、日本人が本気で頭にきてるのは「ふつーは染み込まないギョーザの袋の外から、高濃度の農薬が染み込んだ」とする不条理な主張、これが一番だと思うけど。(で、あの捜査どうなったの?)ちゅーごくのお金持ちは、日本のブランド野菜を高額で買ってくれる。財政難の大阪に遊びに来て大枚はたいてくれる。これからは環境対策に金を掛け、日本の中小企業に出資しそうという話もある。その反面、すでに下り坂で回収できない借金があり、迷惑掛けているという話もある。日本の商品名を勝手に登録したりするパクリ騒動もある。…今ケンカする訳にはいかない相手だから、緊迫するよりは友好する方が大事だとは思うけど… えげつなく厄介な友人を抱えちゃったかも知れないよな。
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コメント
チベット問題が革命思想の根幹にかかわるというのは、鋭いと思います。四書五経を読んでいるぐらいなら許せても、生活のすべてを宗教で律する人たちというのは、扱いにくいでしょうね。
投稿: 志村建世 | 2008年5月10日 (土) 22時42分
志村先生・
価値観が全く違うのだから、そうでしょう。認めてしまうと、社会や政治で縛る事はできなくなりますし。いずれ中国も民主主義になる時が来るかも知れませんが、あれだけ民族が複雑に絡まった国家を、国民の意思でなく外圧なんかで一気に民主化したら、むしろ恐ろしい騒乱が起きる可能性の方が高いでしょう。
現実はいつも矛盾を抱えています。抱えながら、取り合えず暴力や差別だけは撤廃し、徐々に妥協点を見出していくしかないのではないでしょうか。
投稿: いくたまき | 2008年5月11日 (日) 03時13分