チラシの裏とノートの裏
今の子供には想像もつかない世界だろうから書いておくが、昔、いわゆる「らくがき帳」をあまり買ってもらえなった子供は、お絵かきしたい時は「チラシの裏」を使った。(^^)そう、今でも新聞に入って来る、「本日大根○○円!」みたいな、スーパーなんかのチラシ。あれの裏の白い部分に描くのである。無論、「お絵かき出来るチラシ」には条件があった。まず両面に広告が印刷されてないこと(当たり前だね)、紙が薄過ぎてインクが透けてないこと(当時は紙質が悪く、裏まで真っ黒なやつが結構あった)、そして何より、紙がコーティングされた光沢紙でないこと。光沢のあるやつには鉛筆が使えないのである。つまりお母さんにとって一番便利であろう「両面にカラー広告、きれいな光沢」のチラシは、描きたい子供にとっては役立たずそのものだった。(^^)…裏が白く、普通の模造紙程度の質のチラシだけ抜き出して集め、二つに折ってホッチキスで止め、ノートを作った。そういうものによく描いていた。だから何の汚れも印刷の透けもない、綺麗な表紙まで付いている市販の「らくがき帳」は、その頃ある意味ゴージャスな憧れの品だった。
今の「らくがき帳」はアニメやキャラクターの絵が付いているものが多いみたいだが、当時は、特に女の子向けのらくがき帳の表紙には、今となっては伝説の領域である高名な少女漫画家の先生たちが、惜しみなくオリジナルキャラクターを描いていた。(男の子向けはロボットや車の絵だったかな)…考えてみればすげー贅沢。(^^;)よくそんなの安価で売ったもんだ。…で、「漫画家になるんだもん」という私の主張をやや理解した親は、小学校の頃はそういうノートも買ってくれるようになった。着飾った美少女が表紙に描かれているだけではなく、めくると表紙裏にも塗り絵みたいな一色のイラスト。1ページ目は「切り取ってお友だちに送りましょう」みたいなカードのイラスト。大サービスである。…そして、何より当時は裏表紙に「着せ替え」が付いていた。女の子のスタイル画と、その周囲に色々なお洋服。バッグとか小物が付いてる場合もある。切り取って遊ぶのだ。お洋服の肩には白い長方形が突き出ていて、この白い部分を折り曲げて女の子の肩に乗っける。うっかり切り落とすと着せられなくなる。(^^)…本体である「女の子の人形」は、上から服を着せる関係上、最小必要限の衣装しか着けていない。つまり…下着とか水着。(^^;)何となく「えっちだけど、いーのかこれ」と思った記憶がある。
「高名な漫画家の絵」と書いたが、それがあるのはさすがにメーカー品で、どことも付かないメーカーのノートには、やはり誰とも分からない作家のイラストが付いていた。絵はうまいヘタ色々。じぇんじぇん可愛くない女の子のイラストのはさすがに敬遠した。(^^;)お洋服のデザインも千差万別で、素敵なのもしょぼい物もあった。…ノートの中身も使ったが、やはり付いてる物は切り取ってみないと気が済まないから、らくがき帳はいつも裏表紙が欠落していた。やっちゃうとノートの傷みが早いんだけどね。お人形は買ってもらっても、玩具屋に並ぶキラキラした「着せ替え衣装」まで次々買ってもらえる子は多くなかったろう。この手軽な紙人形は、そういう女の子の欲求不満のツボを見事に射抜いていたと思う。…でも、私には物足りなかった。ノート片面のスペースなので、着せ替える衣装が2着くらいしかないのだ。「もーちょっと増やせないの?」とか思い、衣装の絵を描いて自作してみる。肩の折りしろもバッチリ。着せてみる…きれーでない。自分にデザインセンスが無い事を思い知る。濃いカラー印刷と、色鉛筆で塗った薄い色のギャップも気に掛かる。ついにはお人形自体を自分で描き、衣装も自分で考え、手製の「着せ替えセット」まで製作した。やったー!これでノート買わなくたって何着でも着せ替え出来る!…しかし、すぐに飽きてしまった。(- -;)やっぱり自分で惚れ込めるほどの美少女や衣装は描けなかったね。そしてらくがき帳本来の使用目的に戻ったのである。
実は…小学校6年くらいの時に漫画を描いた、この「らくがき帳」が今でも1冊残っている。表紙は里中満智子大先生の美少女。コマを割ったストーリーマンガを、生まれて初めてちゃんと完結させた(^^)記念に、取っておく事に決めたのだ。しかし、中身は今でも恐ろしくて開けられない。「昔の自分の絵を見ると、正視できなくてキャッと伏せてしまう」という漫画家は結構多い。…ましてや小坊のガキの頃の自分の絵なんて。(^^;)パンドラの箱か爆弾か、つーくらいのものだ。何かの拍子に見付け、表紙の里中先生の美少女だけ眺めて「うんうんキレイキレイ」とまた仕舞い込むだけなのである。
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