花の香りは上か下か
キンモクセイという花がある。木にオレンジの小さい花がわーっと群れて咲く。季節になると、キンモクセイを植えている庭の周辺に特徴的な甘い香りが漂う。…しかし、そんな風情のある庭が近所にない場所で育った子供は、それが花の香りだという事が分からない。
昔「EVE」というガムがあった。大人っぽいデザインで高級そう。どんなんだ、と思って買って食べてみた。…うがぁ!な、何だこれは。食品でなく化粧品の味だぁー!…と、子供の私はパニック。これ、キンモクセイの香りを使った、画期的な「香水ガム」だったのだ。調べてみたら、当時このガムのファンだった人の要望で2010年に復刻発売されたりしたらしい。オシャレで大人っぽくて好きだった、という声が結構ある。でもまあ、食べた当時の私は何のオシャレ心もないハナタレガキだったので。(^^)このガムを理解するのに時間が掛かった。…キンモクセイの香りって書いてあるが、キンモクセイって何だ? まず花を知らない。ともあれ、入ってるのは化学薬品でなく花の香料らしいと分かって一安心。食べてはいけないものを食べたのかと思ったのだ。…後に、どこかの庭で「あれがキンモクセイよ」と教えられた。花の香りとして嗅いだら大変いい香りだ。ようやっとキンモクセイが好きになった。
そして…成長した頃。まだ上京前、私の母親が、トイレの芳香剤に好んで「ピコレット・キンモクセイの香り」を置くようになった。へぇーこれって芳香剤にもなるんだ…と感心してたら、そのうち世間の子供が庭のキンモクセイを指差して「あートイレの匂いだー」と言うようになった。それでちょっと世間で「嘆かわしい」とか問題になってたように記憶している。(^^)ただ、問題になった頃は多分、私はもう上京して下宿にいた。共同トイレに自腹で芳香剤を買って置くほど親切ではなかったから、しばらくトイレの芳香剤とは無縁の生活を送っていた。そうこうするうちに、ピコレットが世間から消えた。私はてっきり、この「キンモクセイをトイレと言われた事件」が影響して売らなくなったのだと思ってたが、調べたら発売元の藤沢薬品が家庭用薬品から撤退、事業をライオンに譲り渡し、んでそのライオンが発売を止めたんだと分かった。…複雑な事情があったんだね。でも、じゃーそのライオンはなんで「キンモクセイ芳香剤」を止めてしまったのか。ピコレット世代の人は、いまだにキンモクセイを嗅ぐと「トイレの匂い」と思うらしいから、やっぱりこの件の影響がなかったとは言えないだろう。「風雅な花の香りを、子供にトイレの匂いと記憶さるのはいかがなものか」…という配慮。
そんな訳で最近は、キンモクセイ芳香剤は全く見なくなった。ちょっと淋しい気もする。しかし、無いにもかかわらず「キンモクセイ=トイレ」というイメージは、ある世代に根強く残っている。子供の時の刷り込みって生涯引きずるもんねえ。私の場合キンモクセイ初体験はガムだったから、イコールトイレ、という感覚はない。…しかしだな。「トイレ」のイメージを持った人がキンモクセイガムを食べた場合、一体どうなってしまうのだろう?…それを想像すると、大きなお世話とはいえなんかちょっと心配なのである。
余談だが、結婚して間もない頃「桂花」という良く分からない小瓶を買ってしまった。中国産の薬味で、赤黒くねっとりしてるから「豆板醤」の一種と間違えたのだ。これは実は、あちらで正月用の菓子などに使う「キンモクセイの香料」だった。結局、何に使っていいのか分からないまま破棄してしまった。もったいない。やはり日本人がキンモクセイを食べる、ってのはいまいち板に付かないようだ。(- -)
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