これが元祖ポイントカードだ
今、ポイントカードには色々な形式がある。一番スマートなのはICチップか。次が磁気ストライプの読み取り式。少し前のは裏面全体が黒とか茶の磁気シート。それ以前のタイプは大体、区分けした紙のカードにシールを貼っていく。もっと簡単なのは小さなハンコを押す。…これらのポイントカードは今でも使われている。でも、私が子供の頃はこーいうのは無かった。親が熱心に集めていた「市場の買い物券」は…糊貼りだった。
「市場」である。小奇麗な「スーパー」ではない。買い物をすると、その値段に応じた数だけ、小さな切手そっくりの券をくれる。ミシン目を手で切り取るのだ。切手と違う所は、印刷が一色で安そうなこと。そして裏に糊も何も付いてないこと。(付いてるタイプもあったかな?)店の側にはこの券がずらっと並んだ、ミシン目入りの大きなシートが用意してあり、そこから少しずつ破り取っては客に配る。忙しい最中に手で破るので、時として破り方がいーかげんになり、端が欠ける事もある。…高い買い物には多くの券を出す訳だから、シートの原本から幾分繋がったままで破り取られる。そういうのは見た目もキレイで貰う方も気持ちがいい。(^^)しかし、せこい買い物だと「券1枚」という場合もあり、そういうのは破りにくいのかキレイには切れてなかった。
…で、この券をどうするかというと、同じく市場の各店舗に置いてある「台紙」をもらって(これは頼めばいつでもくれる)、そこに手で貼るのである。台紙には券を貼るマス目のラインと、あと薄い色で宣伝なんかが印刷してあった。お母さん連中は大抵買い物券を財布の中に溜め込んでおり、券がある程度集まると「工作用のり」を持ち出して来て、マス目に合わせて貼っていく。…面倒な作業である。だからよく「あんたやっときなさい」と子供に押し付ける。(^^)そんな訳で、私もよくこの「券貼り」をやらされた。大きく繋がったままの券は当然貼りやすくて楽。(はみ出した分は破って次の段へ。わかるね)だが…一枚一枚にバラけたやつは。面積が小さいから、糊を付けるとベチャーっとはみ出してかなりイヤだった。その上、長い間財布の中で眠っていて、出し入れされる札や硬貨にもまれてきた1枚券はかなりボロボロになっている。時として、「そこまで小さくなるか」というくらい折り畳まれている。それを破かないように広げて伸ばして、1枚も無駄にしないように張り込んでいく。何故なら…この「台紙」、ケチな事に両面この買い物券で埋めないと換金してくれないのだ。もう少しで完成!…という所まで来ても、あと1枚が足りなくては使えない。ともあれ、お買い物券の完成は結構真剣勝負だった。完成した台紙は、あらゆるサイズの券を繋ぎ合わせた物なので見た目ガタガタだったが、埋め切った達成感があった。(^^)
出来た物は親に納入(?)するが、親の機嫌がいいとそれで何かおごってくれる。一番ゴージャスだったのはお好み焼き。でもまあそれは時々で、大抵はお茶屋の前かどっかに設置してある「グリーンティ」か「冷やしあめ」だった。…地域によって違うのかも知れないが、当時の行きつけの市場では何故かこの二つが大抵セットだった。冷えた透明のタンクの中で液が回っている。缶でもビンでも売ってない飲み物だから、それだけ妙なスペシャル感があり、飲ませてもらえない普段の買い物時は羨望のマナコで眺めながら通り過ぎた。
この先、ポイントは完全に電子化していくだろう。あの糊まみれで奮闘した時代に戻りたいとは思わないが、一個一個マスを埋めていく庶民の努力は、今も形を変えて健在なんだなーと思っている。
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