窓抜けの達人技。
それがいつで、どこに住んでた時か、もう判然としないのだが。小学1,2年では小さ過ぎて届かない。5,6年生では大き過ぎて入らない…と思うから、多分小学3,4年の時だったと思う。
その頃、私はいわゆる「かぎっ子」だった。今はそういう呼び方はしないと思うが、要するに昼間は親が働いているので、鍵を持って学校に行き、もしくは鍵をどこかに置いてもらい、帰ったら誰もいない家に鍵を開けて入る…という子供の事である。もう普通なのかな。当時はまだ「お父さんは仕事、お母さんは専業主婦、だから子供が家に帰ったらお母さんがいるのは当たり前」という時代だったから、かぎっ子という言葉には「淋しいだろうから可哀想」というニュアンスがあった。…なんの。(^^)私は母子家庭歴が長かったし、母親がそーとーアクの強い性格で、正直いない方が楽(^^;)という面もあったし、何より1人で勝手に遊ぶのに慣れていたから、特に問題があるとも不自由とも思っていなかった。要はちゃんと鍵があって、家に出入りできればそれでいいのである。
その日、どういう状況だったのかはもう思い出せない。鍵を持って行くのを忘れたか、勘違いがあって鍵の置き場所が分からなくなったか、何かそんな事だったと思う。…学校から帰ったら鍵がない。家に入れないのだ。私は軽くパニックになった。親がいなくても驚かないが、せっかく帰って来たのにカバンが置けない、お茶も飲めない、部屋のらくがき帳も使えなければマンガも読めない、テレビも見られない…しかも母親の帰ってくる夕方まで。そんなのは嫌だー!…という訳で、必死で家に入る方法を考え始めた。無論、押せど叩けどドアからは入れない。
当時いたのはマンションかアパート。一戸建てには住んだ事がなかった。正面突破は無理なので周囲を探索する。裏に回ってベランダの向こうの、風呂場の小窓が開いているのに気付く。…あそこ以外入れる可能性はないな。でもベランダに直接上がれた訳はないから…多分、よそのお宅のベランダにどうにか潜り込み、そこから敷居を乗り越えて自分の家のベランダに辿り着いたんだろう。その程度の事はやらかすガキだった。で、どうにか自分ちのベランダに入り込み、風呂場の窓から潜入を開始した。…が。ここからの記憶がはっきりしないのだ。風呂場の窓というのはいわゆる「回転窓」で、どんなに開けても斜めになるだけで決して全開しないタイプ。潜り込もうにも大した隙間はない。なのに、私は四苦八苦してそこを通り抜け始めた。
結果的にいうと…かなりの時間を掛け、ついに私は風呂場の窓を突破した。幸い水の抜かれていた湯船に着地し、「やったー!おうちに入れたー!」と大喜びで中から鍵を開けたのは覚えている。…でも、どーやって。それがいまだに分からないのだ。頭から窓に突っ込んだんだとしよう。当然頭から落ちるから、無事では済まなかったろう。斜めの窓に阻まれて、途中で体勢を変える事は出来ない。…じゃあ足から潜り込んだのか。そもそも風呂場の窓自体が、小学生の子供には高過ぎる位置にある。何かを踏み台にして上ったとしても、そこに足先を入れるのは逆立ちでもしない限り不可能だ。で、当時もその後も私は逆立ちなんか出来ない。一体あの窓抜けはどうやったんだ…
子供は体が柔らかいし、体重も軽い。大人になった今となっては想像も付かないアクションで抜けたんだろうとは思う。でも目撃者も誰もいないし(大人が目撃してたら騒ぎになってたろう(^^))、今となっては謎としか言いようがない。…ただ、見事通り抜けた達成感の直後に、「あ、こんな事ができるのはこれが最後だろうな…」とぼんやり考えた事は覚えている。子供の時にしか出来ない事、分からない事というのは結構あるのかも知れない。
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