« 無敵タケノコとの出会い。 | トップページ | 蝶は義理堅いのだⅡ »

2011年3月 7日 (月)

トイレの紙様ごめんなさい

「トイレの神様」の歌が流行った時、あれっと思った。…教えられた事が違う。「掃除をすると美人になる」なんて母親は一言も言わなかった。大体「トイレ」なんて呼ばない。言われたのは「下半身すっぽんぽんで便所に入ると、便所の神様が怒るよ」…だったのだ。でも、お風呂に入ろうとして服を脱いでしまった後、急に「行きたく」なる事ってあるじゃないですか。緊急事態なので再びパンツを履いてられない。それ以来、そういう状態で入る時に私は「便所の神様ごめんなさい、便所の神様ごめんなさい」と唱えるようになった。…この癖は今でも少し残っている。(- -;)一部では言われてた教えなのかなー。それとも行儀を教えるための、我が母親のオリジナルか。

昔、田舎に預けられていた時は、屋外のいわゆる「ぼっとん便所」だった。(^^)木造の小屋に入ると、四角い穴がボッカリ開いた板間があるだけ。その穴を覗くと…見たくない物が見える。結構落差もあって恐い。だからあまり見ないようにしてサッサと済ます。手を伸ばすと届く位置にあったのが四角い「ちり紙」だった。その頃は洋式便所なんてどこにもないから、紙は当然しゃがんだまま取る。あの四角い紙は、その体勢で取って丸めるのに非常に適していた。…やがて町に戻っても、同じようにしゃがむ和式便所に置いてあったのはまだ「ちり紙」だった。普段ハナをかむのも「ちり紙」。しかしマンションに住み、近代的な洋式水洗便所、いや「トイレ」を使い始めるようになると…その時初めて丸くなった「トイレットペーパー」に出会った。座っていて姿勢が高いから、この体勢だと壁に取り付けられた丸い紙でないと取りにくい。それでもまだしばらく「四角いちり紙」は売られており、母親は買ってよく押入れに入れていた。安いから大量に使う時はこっちにしろと言うのだ。しかし…いつからかそれも無くなり、普段ハナをかむのも箱入りの「ティッシュペーパー」に統一された。気が付けば、「四角いちり紙」は音もなく町から消滅していた。

「四角いちり紙」はティッシュと違い、吸水性はいいが紙質がやや硬く、ゴワゴワしている。試しにペンで字を書くと滲む。ボールペンだと少し書けるが、すぐに筆圧で破れ始める。メモには使えない。しかし裂くと、ティッシュはバラバラになるが、「ちり紙」には方向性があって、ある方向で破くと綺麗にピリリと細長く裂ける。…この性質を利用してよく作ったのが「こより」だった。…今はこの名称も通じなくなって来てるかな。紙をよって、やや丈夫な紐状にしたものだ。母親が作り方を教えてくれた。細長く裂いたちり紙を端から斜めに、30度くらいの鋭角で丸めていく。右手で先端を丸めながら左手で巻き具合を調節する。(右手と左手で巻くスピードを変えろ、とか言われた)最後の端は三角の平面のまま少し残し…完成だ。うまく巻けたものは端を持って立てるとピンと立つが、下手糞でよりが弱いと「ふにゃ」と折れる。これを何に使うかというと…本当は昔、和紙なんかで美しいものを作り、本を綴じたり髪を結わえたりしたらしいな。(^^)でもちり紙のこよりだから、応用範囲は狭い。鼻の穴をくすぐってクシャミさせる事と…あと、「七夕の飾り」に使った。

今はそんなに凝ったものは作らないかも知れないが、私は小さい頃七夕になると奮闘し、短冊のみならず色紙で色んな物を作った。買ったオーナメントを下げるだけのクリスマスより力が入ってたかも知れない。(^^)赤と緑の色紙を切って貼って、黒い点を散らせて「スイカ」とか。紫に黒い頭を付けて「ナス」とか。お供え物の代わりだと思っていた。うまく切り込みを入れると、網のような見事な紙のレースもできる。…それらを下げるのに「ちり紙のこより」が必要だったのだ。先の、三角の余白部分を色紙のオーナメントにぺたっと貼り、もう一方の端を笹の枝にくくる。願いを書いた短冊も同様。これが実に合ってるというか、具合がいい。当時は七夕の終わった笹は平気で川に流したりしてたから、「自然に帰る」という面でもこよりは良かったんじゃなかろうか。(どっち道詰まるか(^^))…やがて七夕は雨の日が多い事を知り、面倒なお祭りはしなくなった。こよりはハナをくすぐるだけの物になり、そして…それも消えた。そう言えばちり紙で、お誕生会なんかの飾りの花も作ったよなあ。細長く蛇腹に重ね折りし、真ん中を輪ゴムで止めてそーっと開くと、ポンポンみたいな花になる。ある世代はすごく作った筈だ。これはティッシュでは花びらが立たないので出来ない。…絶滅したのかと思ってたら、最近100均で「始めから折って縛ってある紙の飾り花の材料」を売っていた。その世代の発想だろうな。(^^)

便所がトイレになったように、ちり紙はトイレロールになった。絶滅ではなく進化しただけだろう。…でもじゃあ、「便所の神様」も「トイレの神様」に進化したのだろーか。進化した神様の教えの方が大事だろうか。(だろうな)でも、それならもう「すっぽんぽんでトイレに入る」のはタブーでなく、罰は当たらないのだろーか。うっかり入った時ほんの少し気に掛かるのである。

|

« 無敵タケノコとの出会い。 | トップページ | 蝶は義理堅いのだⅡ »

幻のアイテム・こんなんあったよね」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: トイレの紙様ごめんなさい:

« 無敵タケノコとの出会い。 | トップページ | 蝶は義理堅いのだⅡ »