メロスはマジ走った
…これは私個人の話ではないので、書いていいもんか悩んだんだが。(^^)今でも強烈に覚えてるし、カンドーしたのであって、決しておちょくる気はないからやっぱり書いておこう。
小学6年だか中学だか。年代は忘れた。まあ、そのくらいの頃。…いわゆる文化祭。今はどうだか分からないが、各クラスが必ず舞台で何かやる事になっていた。大体はお芝居である。子供が脚本を書いて子供が演じる訳だから、そう本気で面白いとか、見られるよーな作品はあまりない。場所はもちろん「体育館」だ。…どこでも大抵そうだと思うが、正面に舞台があって、横が舞台袖。舞台袖に引っ込んで階段を下りると、体育館内のアリーナ側に出るドアがある。それともう一つ…ここには体育館の裏に出られる鉄製のドアがあった。裏は確かゴミ焼却場、石炭置き場などがあったから、ゴミ捨てや石炭運びに便利なように付けられたんだろう。
文化祭は各クラスが順番にこの舞台袖から入り、演じ、終わると引っ込んで席に戻る。自分たちが登場している間以外、生徒は観客にもなる。いちおー終わったら審査や表彰もあったと思うから、他のクラスの演目は「む、こいつらどのくらいうまいんだ?」という感じでそれなりに見ているが、大抵は「まーこんなもんね」というレベルだから…段々退屈はしてくる。(^^)それでも自分たちが演じた時は拍手して欲しいから、他のクラスにもちゃんと暖かい拍手を送るのだ。…「次は○組の『走れメロス』です」というアナウンス。なんでぇ、教科書に載ってるアレか。友情を大切にってヤツだな。また硬くて面白くないネタ選んだなー…などと、見る前は完全に期待してなかった。
芝居は、教科書で読んだ通りの展開。オリジナルじゃないから台本書くの楽だったろう、などと可愛くない事を考えながら見ている。でも原作がしっかりしてる(^^)訳だし、真面目に演じているからこれがそこそこ見られる。メロス役の男の子は上半身裸で、ちゃんとギリシアっぽい雰囲気を出している。…話は進み、いよいよメロスが約束を果たすため走るクライマックスシーン。ナレーター役がト書きを読む。「メロスは走った」
メロス役が走り出した。…と言っても、そんなに広くない舞台の真ん中あたりから向かって左、つまり下手の舞台袖に走り出したのだから、あっという間に姿が消える。…しーん。何も起きない。舞台の役者たちも何もしない。…あれ? 時間が経過していく。主役のメロスがいなくなったまま芝居は止まってしまったのだ。どーしたんだ? さすがにちょっと不安になった頃、メロスが突然反対側の上手から走り出てきた。「メロスは走った、なんたらかたら」とナレーション。来た!…と思ったら、彼はそのままタッタッタと舞台を横断し、あっという間に再び下手へ消えてしまったのだ。…しーん。再び待たされる。何だろーなー…と思ってたら、メロスはまた上手からタッタッタと走り出てきた。
そこでよーやく気が付いた。メロスは下手に引っ込んだ後、袖の外扉から体育館の外に出てタッタッタと走り、上手側の外扉から再び中に入り、上手から登場していたのだ。…つまり体育館の中と外を通り、ぐるぐる周回していた訳。外扉から行き来するには階段を上り下りしなきゃならない…そのメロスは演技ではなく、ほんとーに大変なランニングをしていたのだった。(^^;)舞台を往復すれば済むものを、わざわざ周回したのは…往復では「前へ走り続けた」感じが出ないせいなのか、それとも「大変な距離を走った」というのを実践したかったのか。それを彼が通った時だけ見られる観客は、マラソンのギャラリーのような立場だった事になる。いつまで続くのかと思ったが…3回くらい周回したかな。やっと終わりが来て、メロスは到着、親友と殴り合ったりひしと抱き合ったり、王様も喜びめでたしめでたし。私はカンドーし、思わず惜しみない拍手を送ってしまった。無論芝居にではなく、走り切ったメロスの根性と体力に。つまりマラソンの感動と同じ。…よく考えたら、芝居ではなくそっちで感動を呼ぶという、○組の周到な戦略だったような気もする。
ところで…この時の「メロス」くんは、まあそんなに親しくは無かったんだが、たまたま家が近所だったので小、中、高と学校が一緒だった。同窓会で会った時住所を聞いたので、今も年賀状だけは出している。…こんな話書いちゃってごめんね。(^^)でも、君の偉業は決して忘れない。
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