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2011年3月22日 (火)

「お」の付く飴細工のこと。

小学校低学年くらいの思い出だと思う。…いつ、どこでは思い出せない。

道ばた。飴屋のおじさんが、色々な飴細工を作る路上パフォーマンスをやっていた。子供たちがその周囲にわんさか集まって、おじさんの作業を眺めている。私も入り込んで見た。…割り箸の先に柔らかくした飴を付け、指で形を作り、金バサミのようなものを使ってちょんちょんと切り込みを入れ、それをまた伸ばし、変形させ…ただの飴の固まりが、かなりリアルな動物の姿になっていく。見事な腕前。あまりハッキリした記憶はないが、馬か何かを作ってたのかな。屋台にも数多くの見事な「飴」の動物が刺して陳列してある。子供たちもすっかり感心して見入っている。無論私も。…どうやら、リクエストをしたら「飴でなんでも好きなものを作ってくれる」らしい。こ、これは頼まない手はない!…しかし、恥ずかしいのかあまりリクエストを言い出す子供はいない。私は手を上げた。その当時から恐いもの知らずというか、肝がすわってるというかデタガリというか…まあそーいう性格だった。(^^)私の見たかった飴細工は一つだった。

「女の子作って!」

…その頃は少女漫画をよく読み、お目々パッチリの女の子の絵なんかを描いていた。そーいうのを作って欲しいと思ったのだ。つまり美少女フィギュアの飴細工な。(^^)動物専門かな、とも思ったが、女の子だって植物じゃないんだから動物だろう。それにだめなら「だめ」、出来ないなら「出来ない」と言われるだろう。取り合えず言ってみようと思ったのだ。…おじさんは断らなかった。黙って新しい赤い飴を割り箸に付け、ひねり始めた。…ひねる。なんか時間が掛かっている。今、女の子のどの部分を作ってるのか良く分からない。じっと見つめる。やがて飴の一部をつまみ、むにょんと引っ張って曲げ、垂らすような部分を作る。「あっ、これ女の子のポニーテールだ!」と思った私は更にワクワクして眺め続ける。…ちがう。女の子になっていかない。あれ?

やがて、「ほらよ」とおじさんが私に手渡したのは…ニワトリだった。つーかオンドリ。あのポニーテールは、オンドリの立派な尾羽に変わっていたのだ。…え??

おじさんは、飴を出しながら頑として動じない表情で私を見つめていた。その時、私は悟った。今、私が「これ女の子じゃないじゃん!」と突っ込んだら、このおじさんは「え?オンドリつったんじゃないの?」…と言い返すであろうという事を。

全く納得のいかないまま、しかしおじさんを追求する事もできず、私は別に欲しくなかった「オンドリ飴」を買い、なめなめ一人帰ったのだった。さすがに美少女は作った事がないのに、職人の意地にかけて「そんなん作れねえ」とは言えなかったのかなー、あのオヤジ。(- -)…飴は形が形なんで、とってもなめにくかった。

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