素人に散髪を頼むなかれ。
高田馬場での下宿時代。…えー、私にその下宿を紹介してくれたのは、とある先輩の女性漫画家だった。(- -)それが誰かという事は…まあ分かる人には分かると思うので、あえて名は出さない。Nという人である。とんでもないキャラクターの人。(- -;)初めの頃は同じ下宿の2階の部屋に私、1階に彼女が住んでいて、何かというとよく行き来した。…だけでなく、彼女が漫画のネタに詰まったり悩んだりした時は、2階の私はよく襲撃され、一晩中グチの機関銃を浴びせられたりした。確かに世話にもなったが…振り回されて色々えらい目にもあったのである。そういう話はいくらでもあるが、全部詳細を書いちゃうとモンダイがありそうなので、当時のエピソードを一つだけ。
今もだが…その頃は特にビンボーだった(^^;)ので、私は床屋や美容院には行かなかった。伸びた髪は束ねてくくるだけ。更に伸びたら、仕方ないので自分で切る。そんな私を見て、ある時このNさんが「私が切ってあげる」と言い出した。腕に自信でもあるのか?…と思って聞いてみたらそうではない。「昔、少女漫画に載っていた髪の切り方があるから、あれをやれば簡単に切れる」と言うのだ。なんかすごくやってみたそうである。
そのやり方とは…「首を曲げ、髪を後ろから全部前に持ってきて降ろし、その顔面の前で垂れた髪の先を真っ直ぐに切る」という物だった。こう切るだけで、髪を後ろに戻した時ちょうどいいバラけ具合になるというのである。ほんとに大丈夫なのか…?と半信半疑だったが、彼女があまりにも自信たっぷりだったので、取り合えず頼んでみる事にした。…うつむいて後ろ髪をバサッと逆転させ、といてもらう。そんな体勢なので前は見えない。じゃり、じゃりと大胆に髪を切る音が聞こえる。…やがて終了し、また髪を後ろにバサッと戻す。
…Nさんは突然爆笑した。「わははは!『かまやつ』や~!!」
えっ!…かまやつひろし。そう、1970年代に流行った、あのマッシュルームヘアが伸び過ぎてザンバラになったような独特の髪型。私の頭は、その「かまやつヘア」になってしまっていたのだ…(- -;) 当時は80年代、いくらなんでもその頃にその髪型はカッコ悪過ぎる。…少女漫画に載ってたって、それ一体いつ読んだんだよ。冗談じゃない!…と言いたかったが、切ってしまったものは二度と再び戻らない。彼女もそうなるとは思ってなかったようだが、要は私の髪で実験してみたかっただけなのだろう。しかし、責任を感じるとか悪びれるとか、そーいう機能は彼女の性格の中には全く無かった。(- -;)…大ウケして笑い続ける彼女を尻目に、私は自分の部屋にしょぼしょぼと帰って行った。
それでも切った髪はいつか伸びる。(- -)…これ以降、私はまた自分で髪をくくり、自分で切るようになった。今でも余程の事情がない限り美容院には行かない。何されるか分かったもんじゃないもんなー。まあプロの美容師の人は、読みかじった漫画を参考に髪切ったりしないだろうけど…
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