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2011年5月 1日 (日)

淀長さんの怪談。

ずいぶん昔。…と言っても年代はまるで分からない。「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」で有名な、映画解説者の淀川長冶さんがまだご存命だった頃だ。淀長さんが、自分の体験談としてある雑誌に「怪談」を寄稿していた。この方は映画の話以外は滅多にしなかったと思うので、当時でも「珍しいな」と思って強く印象に残っている。ただ、このエピソードが氏のエッセイ集か何かに収録されているものか、それともあの雑誌記事だけで消えてしまったのかが私には分からない。他に記憶してる人はいないだろうか。

内容の細かい所は忘れたし、違ってるかも知れない。が、大体こんな話だ。…淀長さんは母親をとても大切にしていて、親孝行で有名だった。しかしそのお母さんにも死期が迫ってきた。…ある時、淀長さんとお母さんがいる部屋の四隅に黒い影が現れた。ひざまずくような格好で、彼らはこう言った。

「お迎えに参りました」

すぐにお母さんの事だと分かった淀長さんは驚いて、「あと○ヶ月待って下さい」と言った。…この辺記憶がハッキリしない。3ヶ月だったか2ヶ月だったか。まあとにかく、それを聞いた黒い影たちは「分かりました」か何か言ってそのまま消えてしまった。そして、淀長さんが口走ったのと同じ時間が経過した頃、本当にお母さんは亡くなられたという。…こんな話。和田誠氏か、もしくは和田誠そっくりの見開きイラストが付いていた。「黒い影」は角のある悪魔のような形に描かれていて、多分死神だろうと思わせた。それが極めて丁寧な態度で、執事のようにうやうやしくお母さんを迎えに来たというのが鮮烈で、「やはり淀長さんの親孝行がアチラの世界でも分かっていて、そういう人にはそれなりの礼節のある態度で告知に来るんだろう」と思った記憶がある。

永遠に生きている人間はいない。…でもどうせなら、ずさんに「オラ行くぞ!さっさとしろ!」と連行されるのではなく、丁寧に優しく迎えに来てもらえるような終わり方をすべきなんだろうな。(- -)などと思わせる話だ。

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