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2012年10月19日 (金)

秘密基地のヴォイニッチ

今回ちょっと大作。

「ヴォイニッチ手稿」という手書きの本がある。知らない人には「何のこっちゃ」だろうが…これは、オカルトや不思議話の好きな人の間では有名な奇書。中身は、何語か分からない未知の文字の文章と、地球上には存在しない奇妙な植物、意味不明な裸婦の群れ、曼荼羅のような円…などの絵がびっしり230ページに渡って書かれている。1912年に発見され、以来100年間、様々な人間が解読を試みたが…まだ誰にも読めないらしい。現在は本の劣化を防ぐため、ある場所に厳重に保管され、実物を手にする事は出来ないようだ。その分、ネットに画像が公開されている。

その貴重本「ヴォイニッチ」を写し…しかも文章の「日本語訳」を書き込んだ人間がいたとしたら?

その時私は、やまくんの不思議体験の話を聞き取りしながら、たまたまネットでこの画像を見ていた。彼は子供の頃の秘密基地にあった謎のノートの話をした。そのノートの話というのが、なんか「ヴォイニッチ」に似てる気がしたので、冗談で画像を見せ「こーいうの?」と聞いてみた。そしたら…彼はあっさり「あーこれこれ」と答えたのだ。…え? これこれってなに?

話はこうだ。やまくん小学4年。一時いじめられてた彼も、その頃は友達と楽しくやっていて、よくある仲間内の「秘密基地」を持っていた。場所はただの資材置き場。積んである材木の隙間の空間に入り込んで遊んでたらしい。基地の中には、拾ったエロ本が数冊。(^^;)宝物やお菓子などは持ち込まず、エロ本も読んだら捨てていたようで、まあ基地というか「隠れ家」のような場所だったんだろう。何をするともなく、彼らはほぼ毎日そこに通っていた。

ある時雨が降った。その後日、やま少年と仲間が秘密基地に行ってみたら…中は汚れて泥だらけ。一応材木の天井はあるものの、防水まではされてないから、雨が染み込み放題だったようだ。ふと、誰かが見慣れないノートがあるのを見付けた。普通の、灰色の大学ノート。表紙は濡れたせいでボコボコになっている。めくってみると、途中から変な植物の絵などが20ページくらい、色鉛筆で描かれている。仲間たちはすぐ興味を失ったが、やま少年だけは植物に興味を惹かれ、しばらくそのノートを読み込んだ。絵の横には日本語で解説らしき文章も書いてあるが、やま少年にはまだ文が難しかったので、内容はあまり記憶がない。覚えているのは「めしべが4本」という一文だけ。彼は図鑑を写したものだろう、と思った。

だが無論、仲間の誰もそんなノートに覚えはない。…まずいぞ。ここに誰か知らない奴が来たらしい。見付かったんじゃ、もう使えないなあ… 彼らは相談し、結局その秘密基地は放棄する事になった。バレた秘密基地は秘密基地じゃないもんね。そんな訳で、やま少年はノートを置いて基地を去り、二度と戻らなかった。だからノートがどうなったかは分からない。

そして長い年月が経ち…ネットの画像を見て彼は「あーこれこれ」と思い出したのだ。だが考えて欲しい。やまくんが子供だったのはうん十年前。ネットなんかない。巷のオカルト話だって「幽霊はいるのか?」「エクトプラズム!」「UFO!」くらいのレベルで、口裂け女さえ登場してない時代。ヴォイニッチ手稿なんてコアなネタは、まだ日本人のほとんどが知らなかった頃だ。仮にノートがヴォイニッチの写しだとしても、そんな時代に一体誰が、何の資料を元に写したのか。データだって公開されていたか分からんのに。そして横に書かれていた文章が本当に「解読文」だとしたら、100年解けなかった謎をどうやって解いたか。…普通に考えれば有り得ない話だ。

だから。やまくんが「下手な植物の絵を、ヴォイニッチの絵と混同しただけだ」と誰もが考えると思う。子供の記憶なんて怪しいもんだと。でも、やまくんという人間を知ってる私には勘違いとは思えない。彼の記憶は感覚や映像を中心に働く。筋道立って論理的に話すのは苦手だが(だから、思い出を話させても要素がバラバラで、まとめるのが大変(^^))、その分、映像記憶には実に優れているのだ。それに元々オカルトが(恐いから)嫌いで、私が強要しなきゃ、絶対自分からそういう物は見たがらない。どこかで見て覚えていた…という可能性も薄いのだ。私は念のため、ネットに公開されているヴォイニッチの画像を全部彼に見せ、「この絵はあった?」と聞いてみた。彼はハッキリと「あ、これはあった」「これは無かった」「これは…不明」と判別した。リンクしていいかどうかだが…ここに貼っておく。

http://www.voynich.com/folios/

というページの
f2v f3r f3v f14r f18r f23v f37v f51r f67r(の左ページ)

これらは確かにノートにあったと言っている。…最近、「時空のおっさんの世界」でもよく登場する、重要そうな「中心に顔がある赤青白の太陽」の紋章もバッチリ入っている。(^^)彼の記憶に意味があるかどうかは不明だが、私は「めしべが4本」という文にすごく引っ掛かっている。…そんな植物この世にないと思うので。

追伸・なんでガキの秘密基地にそんなノートがあったのかも謎だが、当のやまくんはこう言う。「ノートを書いた人間は追われてたんじゃない? だから秘密基地にノートを放り込んで隠したんだよ。今まで誰も解けなかったんじゃなくて…実は解いた人間から消されてるんだったりして」…おおい恐いだろーが!

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あり得ない日食 2

やま少年が、変な日食を体験した同じ年。

今度は、彼が学校で授業を受けている最中に異変が起きた。窓の外で、見る見る空が真っ暗になっって行ったのだ。生徒たちは驚き、教室がざわつき始めた。が、先生は平静を装っている。(装ってると子供でも分かる程度には驚いてたのだな(^^))無論この騒ぎは、やま少年の教室だけでなく全校的に広がっていた。

空から雷が落ちて来た。…いや、それは彼が「雷だ」と思っただけのこと。光には音がなかった。バリともゴロとも鳴らず、白く細い光がほぼ直線状に空から地面へと走ったのだ。あの、雷特有のジグザグの軌跡ではない。始めは1本。次に別の場所から2本。更に2本、最後に1本と、ランダムな位置から落ちて来る。彼の表現によると、「雷というより、火山の噴火の火柱が空から下に向けて走ってる感じ」だったそうだ。…だからって、これが雷でないなら何なのだ? ともあれ「雷」だと信じたやま少年は、空が暗いのは当然厚い雨雲のせいだろうと考えた。しかしすぐその考えは消えた。空はあまりにも真っ暗で、とても雨雲程度の遮光とは思えなかったから。生徒たちは教室の窓から不安そうに空を眺め、ああだこうだと喋っている。…やがてチャイムが鳴り、先生はそそくさと教室を出て行く。それが、その日最後の授業だった。

学校が終わってしまったので、生徒たちは帰らねばならない。しかし相変わらず空は暗いままだ。恐がって誰も帰ろうとしない。で、やま少年は友達と何を話してたかというと…実は誰とも話さなかった。(- -)彼はその頃、ちょうど少しいじめられていて、話す友達がいなかったのだ。仕方なく、同じ学校に通っている兄貴の教室に行く事にした。兄は5年生。コの字の校舎のほぼ反対側の教室にいて、運動場を通らなくても辿り着ける。ざわつく生徒たちの(別にパニックは起きてなかった)間を抜け、やま少年は兄の教室に向かった。階段の踊り場で、上級生が「あれ?なんで3年坊主がこんなとこにいるんだ?」と聞かれたが、素直に兄を迎えに来た事を話した。…だが兄は教室にはいない。先に帰ったのかな。…その時、やま少年はふっと思い出した。彼は放送部で、その日は下校の放送をする当番だったのだ。あわてて放送室に向かった。

放送室で、クラブの仲間と会って少し話し(こっちではハブられてなかったらしい)、いつものように「下校の時間です。用事がない人は家に帰りましょう」とやって…

そこから…何故か記憶が曖昧だという。真っ暗な街中を通って行ったのか。道は分かったのか。思い出せない。ただ、気が付くとやま少年は家にいた。しかし兄はいない。…いない筈だ。良く考えたら、彼の兄はその頃リューマチ(子供なのに…)で入院してたのだから。なら、なぜあの時兄の教室に迎えに行ってしまったのか? …全てが良く分からない。しかし、夢ではなかったと彼は言う。事態の前後は忘れても、あのとんでもない暗さだけは鮮明に覚えているから。彼はずっとこの出来事を「日食」だと記憶していたが…違うだろーこれは。ちなみに、この「暗かった日」の出来事について、その後彼が友達たちと語り合った事は一切無かったという。

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2012年10月18日 (木)

あり得ない日食 1

やまくん小学3年の時の話。彼は言う。「その年は、やたら日食が多かった…」
この時点ですでにおかしい。年に何回も日食が起きる訳がない。皆さんご存知の如く、一度起きるだけでもあの騒ぎだ。…「うん十年に一度の天体ショーです!」「日食グラスを買いましょう!下敷きで太陽を見ないように!」「えー日食が起きる原理は…」学校では、生徒総出で観察。テレビは中継。コトが多少昔でも、日食が社会的イベントなのは変わらなかった筈だ。なのに、彼が記憶している日食は、誰もそんな話してないのに「ただ突然真っ暗になった」…それだけなのである。

順を追って書こう。バラバラなやまくんの記憶の話を繋ぎ合わせ、再構成してみた。まず「1度目の日食」。

その日、やま少年は一人家でテレビを見ていた。とある(後に超有名になる(^^))テレビ番組の初回、その番宣番組だったという。すると…突然停電になった。テレビも消えた。あわてて外に出てみると、空は真っ暗。夏の6時頃である。まだ日没の筈がない。それに…周囲の風景は普通に見えていた、というのだ。…変でしょ。空が闇で電気が消えていれば、普通は何も見えない。どう考えても尋常な状態ではない。しかし恐れを知らないやま少年は、ここで「あ、日食が起きた」と思い込んだ。日食という現象だけは知っていて、「日食とはそーいうものだ」と考えたんだな。恐がりもせず「わー面白い!」と喜び、家にいてもしょうがないので、自転車のライトを付けて近所を走り出した。

真っ暗な空以外は、いつもの町の風景。市場を通過し、やがて、家の前に縁台を置いて将棋を刺しているおっさん達を見付けた。(そういう人がよくいた時代だね(^^))いつもそこで将棋をしてる人達なので、やま少年は警戒感もなく自転車を止め、声を掛けた。「どうしてこんなに急に暗くなっちゃったんでしょうね?」…するとおっさん達は怪訝そうに手を止めて答えた。「え?いつもこんなもんだけど?」 なんとなく話が合ってない。構わず、やま少年は再び自転車で走り出す。「そうだ、学校に行ってみよう」

彼が通っている小学校に着いた。…門は閉まっている。誰もいない。校内には入れない。ふと空を見上げてみると…一部が「真っ暗」ではなかった。いつの間にか赤くなっていたのだ。毒々しい、オレンジ掛かった赤。「夕焼けの色じゃなかった」と彼は断言する。恐くはないが「変なの…」と思ったやま少年は、自転車駆って家へと引き返した。

家に帰り元の部屋にいると、しばらくして電気が付いた。外は外灯の明かりで明るくなった。本当に日が暮れたのである。そしてすべては普通に戻った…

以上がやまくんの「一度目の変な日食」である。…いや、それは日食じゃないって。この話、オカルト好きな人なら知っている「時空のおっさん」に酷似しているのだ。突然、今の世界とそっくりな別の空間に迷い込む話。異様に真っ赤な空。それでも「ほんとに日食だったんじゃないの?」と疑う人の為に言っておくと、彼が見ていたテレビ番組の放送年は分かっている。調べた所、その年に日食は起きてないのだ。前後数年も、ごく僅か太陽が欠ける日食があった程度で「真っ暗な日食」はあり得ない。一体やまくんの見た「真っ暗な空」は何だったのだろう?

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