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2012年10月19日 (金)

あり得ない日食 2

やま少年が、変な日食を体験した同じ年。

今度は、彼が学校で授業を受けている最中に異変が起きた。窓の外で、見る見る空が真っ暗になっって行ったのだ。生徒たちは驚き、教室がざわつき始めた。が、先生は平静を装っている。(装ってると子供でも分かる程度には驚いてたのだな(^^))無論この騒ぎは、やま少年の教室だけでなく全校的に広がっていた。

空から雷が落ちて来た。…いや、それは彼が「雷だ」と思っただけのこと。光には音がなかった。バリともゴロとも鳴らず、白く細い光がほぼ直線状に空から地面へと走ったのだ。あの、雷特有のジグザグの軌跡ではない。始めは1本。次に別の場所から2本。更に2本、最後に1本と、ランダムな位置から落ちて来る。彼の表現によると、「雷というより、火山の噴火の火柱が空から下に向けて走ってる感じ」だったそうだ。…だからって、これが雷でないなら何なのだ? ともあれ「雷」だと信じたやま少年は、空が暗いのは当然厚い雨雲のせいだろうと考えた。しかしすぐその考えは消えた。空はあまりにも真っ暗で、とても雨雲程度の遮光とは思えなかったから。生徒たちは教室の窓から不安そうに空を眺め、ああだこうだと喋っている。…やがてチャイムが鳴り、先生はそそくさと教室を出て行く。それが、その日最後の授業だった。

学校が終わってしまったので、生徒たちは帰らねばならない。しかし相変わらず空は暗いままだ。恐がって誰も帰ろうとしない。で、やま少年は友達と何を話してたかというと…実は誰とも話さなかった。(- -)彼はその頃、ちょうど少しいじめられていて、話す友達がいなかったのだ。仕方なく、同じ学校に通っている兄貴の教室に行く事にした。兄は5年生。コの字の校舎のほぼ反対側の教室にいて、運動場を通らなくても辿り着ける。ざわつく生徒たちの(別にパニックは起きてなかった)間を抜け、やま少年は兄の教室に向かった。階段の踊り場で、上級生が「あれ?なんで3年坊主がこんなとこにいるんだ?」と聞かれたが、素直に兄を迎えに来た事を話した。…だが兄は教室にはいない。先に帰ったのかな。…その時、やま少年はふっと思い出した。彼は放送部で、その日は下校の放送をする当番だったのだ。あわてて放送室に向かった。

放送室で、クラブの仲間と会って少し話し(こっちではハブられてなかったらしい)、いつものように「下校の時間です。用事がない人は家に帰りましょう」とやって…

そこから…何故か記憶が曖昧だという。真っ暗な街中を通って行ったのか。道は分かったのか。思い出せない。ただ、気が付くとやま少年は家にいた。しかし兄はいない。…いない筈だ。良く考えたら、彼の兄はその頃リューマチ(子供なのに…)で入院してたのだから。なら、なぜあの時兄の教室に迎えに行ってしまったのか? …全てが良く分からない。しかし、夢ではなかったと彼は言う。事態の前後は忘れても、あのとんでもない暗さだけは鮮明に覚えているから。彼はずっとこの出来事を「日食」だと記憶していたが…違うだろーこれは。ちなみに、この「暗かった日」の出来事について、その後彼が友達たちと語り合った事は一切無かったという。

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