あり得ない日食 1
やまくん小学3年の時の話。彼は言う。「その年は、やたら日食が多かった…」
この時点ですでにおかしい。年に何回も日食が起きる訳がない。皆さんご存知の如く、一度起きるだけでもあの騒ぎだ。…「うん十年に一度の天体ショーです!」「日食グラスを買いましょう!下敷きで太陽を見ないように!」「えー日食が起きる原理は…」学校では、生徒総出で観察。テレビは中継。コトが多少昔でも、日食が社会的イベントなのは変わらなかった筈だ。なのに、彼が記憶している日食は、誰もそんな話してないのに「ただ突然真っ暗になった」…それだけなのである。
順を追って書こう。バラバラなやまくんの記憶の話を繋ぎ合わせ、再構成してみた。まず「1度目の日食」。
その日、やま少年は一人家でテレビを見ていた。とある(後に超有名になる(^^))テレビ番組の初回、その番宣番組だったという。すると…突然停電になった。テレビも消えた。あわてて外に出てみると、空は真っ暗。夏の6時頃である。まだ日没の筈がない。それに…周囲の風景は普通に見えていた、というのだ。…変でしょ。空が闇で電気が消えていれば、普通は何も見えない。どう考えても尋常な状態ではない。しかし恐れを知らないやま少年は、ここで「あ、日食が起きた」と思い込んだ。日食という現象だけは知っていて、「日食とはそーいうものだ」と考えたんだな。恐がりもせず「わー面白い!」と喜び、家にいてもしょうがないので、自転車のライトを付けて近所を走り出した。
真っ暗な空以外は、いつもの町の風景。市場を通過し、やがて、家の前に縁台を置いて将棋を刺しているおっさん達を見付けた。(そういう人がよくいた時代だね(^^))いつもそこで将棋をしてる人達なので、やま少年は警戒感もなく自転車を止め、声を掛けた。「どうしてこんなに急に暗くなっちゃったんでしょうね?」…するとおっさん達は怪訝そうに手を止めて答えた。「え?いつもこんなもんだけど?」 なんとなく話が合ってない。構わず、やま少年は再び自転車で走り出す。「そうだ、学校に行ってみよう」
彼が通っている小学校に着いた。…門は閉まっている。誰もいない。校内には入れない。ふと空を見上げてみると…一部が「真っ暗」ではなかった。いつの間にか赤くなっていたのだ。毒々しい、オレンジ掛かった赤。「夕焼けの色じゃなかった」と彼は断言する。恐くはないが「変なの…」と思ったやま少年は、自転車駆って家へと引き返した。
家に帰り元の部屋にいると、しばらくして電気が付いた。外は外灯の明かりで明るくなった。本当に日が暮れたのである。そしてすべては普通に戻った…
以上がやまくんの「一度目の変な日食」である。…いや、それは日食じゃないって。この話、オカルト好きな人なら知っている「時空のおっさん」に酷似しているのだ。突然、今の世界とそっくりな別の空間に迷い込む話。異様に真っ赤な空。それでも「ほんとに日食だったんじゃないの?」と疑う人の為に言っておくと、彼が見ていたテレビ番組の放送年は分かっている。調べた所、その年に日食は起きてないのだ。前後数年も、ごく僅か太陽が欠ける日食があった程度で「真っ暗な日食」はあり得ない。一体やまくんの見た「真っ暗な空」は何だったのだろう?
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