カテゴリー「自分のビミョーに奇妙な体験」の記事

2011年3月 8日 (火)

蝶は義理堅いのだⅡ

ごく近年の話。(^^)

フリーのフラッシュ製作ソフトでネット脱出ゲームを作った。…脱出ゲームは結構好きで、フラッシュ以外の変な方式で何個か作った事はあるが、本格的なものはそれが初めて。一作目は、「椅子な脱出」という。これは別にいいんだが…二作目に作った「待合室」が、なんかちょっと… 作ってて自分でも不可思議な事があった。

そもそも「椅子な脱出」を作り終わってグッタリしてたから、二本目までやる気はなかったのである。設定も「田舎の駅の待合室からの脱出」というだけで、始めはアイデアすらろくに出てなかった。…なのに、何か他の作業をしようとしても、これが頭に浮かんでしょーがなくなる。ついに、「えーいこれじゃ作った方がマシだ!」と製作に踏み切った。詰まってた謎解きのネタは、「そうだ、昆虫を使おう」と思いついたら、あと全部出せた。いやあ虫のおかげ。(^^)絵やシステムの製作も大変だったが、入れ込んでいるので苦にならない。で…クリアアイテムの入ってる最後の宝箱の仕掛けを考えた時、パスワードは謎を解けば見られるので、あと一つカラーコードも付けようと考えた。色を正しい順番で並べないと開かない。その色のヒントはどうする…? 「蝶にしよう」と思った。この際昆虫づくしで。誰でも知ってる蝶を白黒で描き、羽の色をヒントにすればスッと解いてくれるだろう。今ここで書いてしまうが、選んだのはアゲハチョウ、アオスジアゲハ、アカタテハ、トリバネアゲハである。

アゲハチョウの幼虫は柑橘類の木に付く。庭木にする家も多いから、町でも結構飛んでいる。アオスジはややレアだが有名だし、ちょっと近くに雑木林でもあれば見られる。アカタテハは野原の足元によくいる。どれも日本の平地に普通に生息する種だ。トリバネアゲハだけは…東南アジア産で、美しいので乱獲されて最近は希少だが、昔は昆虫図鑑の最後の方の「世界の大きな昆虫」とかの特集ページに必ず載っていた。模様も特徴的だし、図鑑を見れば分かるだろう。一つくらい難易度を高くしてもいいよな。…という訳でこの4種にしたのだ。さて、完成したゲームをアップし、プレイしてもらい、ミスがあって慌てて直したり…ともあれ公開に漕ぎ着けた。難し過ぎるとか(^^;)評価は色々あったようだが、おおむね喜んでもらったと思う。しかし、作者としては思いもよらなかった感想が多くあった。「蝶の羽の色が分からない」というのだ。

え?…蝶の色はこのゲームの謎の中で、一番易しい部類だと思っていた。模様だけでも分かるだろうと。しかし「分からない」「図鑑を調べまくって大変だった」という声が多数。「ゲーム中に蝶の羽の色のヒントがないのはおかしい」というクレームまで。最近のネットやる人たちは全然見た事ないのか?…少し悩んだ。(- -;)何かヒントをと言われても、私はそれ以上のヒントをゲームの中に入れたくなかった。むしろ近所を観察したり、いなければちょっと郊外の野原に散歩に行って欲しかった。別に今すぐ解けなくても、どこかで蝶を見かけてからクリアしたっていいじゃん。その辺にいる蝶なんだから。…そういう考えはネット住人には通じないのかなあ。と、少し悶々としていた頃。…蝶たちがうちに訪れたのだ。

始めはアゲハチョウだった。私の目の前をヒラヒラ飛び、うちの庭の伸び放題で雑草化したパセリの花に止まった。人間がいるのに逃げもせず、しばらく悠然と羽ばたいて美しい羽を見せびらかす。…ほんとに「見せ」ているように思える。平凡なアゲハチョウでも…こうやって近くで見るとほんとに美しいなあ。などと感心していると、やがてゆっくり飛び去った。私には「ゲームに出してくれてありがとー」と言っているように思えた。まあ、自分に都合のいい解釈だが。

次にアオスジアゲハが来た。アオスジは低い所は飛ばないので、少し見上げる格好だったが、ともあれ庭を通った。アゲハより人間に近付きたがらない蝶なのに、よく来てくれたと思った。「4羽の蝶・その2」にも会えたと喜んでいたら…後日アカタテハも来た。庭の雑草の上でパタパタしている。「4羽の蝶・その3」だ。1羽や2羽なら偶然だろうが、3羽まで来るとはただ事ではない。(^^)無論、毎年庭で見掛けるほどたくさんいる訳ではないのだ。…だが、4羽目の「トリバネアゲハ」だけは絶対目撃不可能である。なんせ日本にはいない。3羽が来ただけでも凄い事だ。…しかし、その後私は4羽目を「目撃」するのだ。

やまくんの車で、スーパーに買い物に行った時のこと。近所なのでナビはテレビにしていた。…ちょうど夕方で、テレビにニュース映像が映る。「違法に輸入された珍しい蝶が押収されました」…ええっ!? アップになっているのは、確かに「4羽の蝶・その4」トリバネアゲハじゃないか。電波が悪く画像は汚かったが、あの模様と色は間違いようがない。家に帰って再び見たニュースでも映っていた。…まさか。考えてみて欲しい。最近テレビに蝶がアップで映る事なんて何回あるだろう。しかもそれが、絶対見られないと思っていた「最後の1羽」なのだ。偶然にしても出来過ぎている。…無論映ってたのは標本な訳だが、私には、トリバネアゲハが他の3羽に負けじと「あたいはここー」と存在を主張したように思えたのだ。

こうして…その夏、私はゲームに登場させた蝶全てに会う事が出来た。あるいは、私がゲームに出したから現れたのではなく「そうよ、あたしたちは現実にいるのよ。もっとちゃんと観察して欲しいわ」と、蝶が世間に自分をアピールしたかったのかも知れない。ファンタジーな解釈が過ぎるだけで、つまらない偶然かも知れないが… 下宿にいた頃のモンシロチョウの事件もあるし、以降私の考えでは「蝶は作品に登場させたら、ちゃんと挨拶に来るほど義理堅いのだ」という事になった。(^^)

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2011年3月 1日 (火)

人生で一番ツイた瞬間。

私は大体クジ運がない。(^^)思い出す限り、クジに当たって何かもらった…というのは、小さい時の駄菓子屋、高校の時のアイス、そして「これ」の3回だけだ。駄菓子屋の方は、もう記憶がほとんど消えているので気のせいかも知れない。滅多に買わないのに、ある日思い切って買ったらチョコが当たった。…気がする。駄菓子屋にしては大当たりだから喜んで食べた。…食べた瞬間、「シュワ」と口の中で溶けて消えた。チョコならではの「トロ」がまるでない。何で出来てたんだ。あれ本当にチョコだったのか。(^^)…あと。高校の学食の食堂でアイスを売っていて、そこで「チョコバリ」というアイスを食った。食い終わって棒を見たら「もう1本」と書いてあった。オニの首を取ったよーに嬉しくて、3年間チョコバリを食い続けたが…二度と当たらなかった。が、まーそんなせこい思い出はいいとして。

高田馬場で漫画を描いていた頃。数回仕事をした某出版社から、パーティの招待状を貰った。その頃はまだバブルで景気が良く、出版社もあまり縁の深くない作家にまで気前良くサービスしてくれたのだ。私と違って売れっ子、金持ちの漫画家センセイの中に混じるのはすごく気が引けたが、多少仕事しててもまだまだビンボだった私としては、「食費が浮く!」というだけでこの招待は落とせなかった。

…細かい事は忘れたが、かなり華やかなパーティだったと思う。立食バイキング、好きな物を食べていい。メニューも結構豪華。(^^)着飾ってオホホと談笑する出席者を物ともせず、私はその間を走り回って食った。食った。また食った。ローストビーフ、エビ、あとキャビアらしき物があったのを覚えている。…本物だったなら、この時食ったのが生涯初の、そして多分生涯最後の(^^;)キャビアだろう。誰か知り合いがいて、「あれが○○先生だよ」とか教えてくれた気がするが…すいません食い物だけで、出席者の事は何も覚えていません。<(_ _;)>

パーティの最後に、定番のくじ引きがあった。入場の時にもらった番号札と同じ番号が出れば賞品がもらえる。会場の奥を仮の舞台にし、そこにクジや賞品が並べられ、進行役が説明を始める。…1等は何か忘れたが、電化製品だったかな? もちろん一番高いものだが、私はぜんぜん興味がなく、生意気にも「なんだ、あれだったらいらねーや」とか思っていた。しかし2等は「ジバンシーのコーヒーセット」だったのだ。…これは欲しい!と思った。なんせコーヒー大好きで、1日5~6杯は飲んでたが、素敵なカップってのを持ってなかったのだ。長年愛用のマグも小汚くなった。そこで出会った高級なコーヒーセット。…モノを、あれだけ素直にストレートに「欲しい」と思った事はあまりない。私は隣にいた奴に笑顔で話しかけた。「もし私が1等取ったらあんたにあげる。その代わり2等が出たらちょうだいね」…パーティのノリの軽口に過ぎなかった。しかし。

マジ。私のクジ引き換え番号は、2等のコーヒーセットに大当たりしたのだ。

大びっくり!しながらも、私は大喜びで舞台へ名乗り出て、ジバンシーコーヒーセットの大箱を抱えて戻って来た。さっき話し掛けた人に「2等だから私のね」と言ったかどうかは定かでない。多分、人生で一番「幸運の女神」が降りた瞬間だったんだろう。…でもその後は体調を崩したり、住んでた下宿が地上げ屋に買い叩かれて転居するハメになったり、結婚したり…ロクな事がなかった(^^)。幸運はまれに人に訪れる。しかし、その代償としてどこか別の部分に回されているラッキーが回収されてしまうんじゃなかろうか。だから私はそれ以降、クジや賭けの類には一切夢を持たない事にしている。

余談だが…このコーヒーセットは今でもうちにある。カップ以外は。(^^)カップは邪魔なので親にでもあげたかな。ブランド品だが、良く見ると真っ白なだけで面白くも何ともないから、結局あまり使わなかったのだ。ブランドカップでコーヒーを出してあげたい客も別に来ないし。でもまあ、「当てた」という事実が肝心だから別にいい。ちなみに、コーヒーは今でも、下宿時代以来愛用の「小汚いマグ」でおいしく飲んでいる。

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2011年2月26日 (土)

霊にカケアミされた話

これは私の、おそらく生涯ただ一度の…オバケにまつわる話である。(^^)しかし、まつわっただけで見た訳ではない。

高田馬場の下宿で漫画を描いていた時代。ある友人がいて、時々部屋に遊びに来た。出身地が同じ大阪で近かった繋がりである。…ちょっとエキセントリックな人でね。(^^;)私とは趣味も性格も全く違って、美少年好き、ファッション精通、聴く音楽はハードロック。わりと入り浸ってたので、一度原稿の手伝いを頼んだ事があるが…そっちはアカンかった。ただ、私にはない「霊感」があるらしかった。自称だが。私に見える訳じゃないから、それがホントなのか気のせいかは私には分からない。

ある夜、彼女が机代わりのコタツの上にあった紙に落書きを始めた。そして「今、このへん(肩の辺りを示す)に来てやんねん」と言い出す。何が来てるのかと聞いたら…これが「霊」らしかった。(^^;)しかもタヌキ。無論私には何も分からない。ただ、落書きしてる事から考えても「こっくりさんとかで来るやつと同類かな」という気はした。…一応、子供の時にそーいうのも流行ったからね。そんなに深入りはしなかったがある程度知っている。聞く所だと、あまり高級でない(^^)霊らしい。つまり彼女でなく、今手を動かして落書きさせているのは、その「タヌキ」だという事になる。…何を書いてるのかと思って紙を見たら、文字でなく図形だった。なんか四角を描いている。

「この四角がな、このコタツや」「へ?」「だから、今いるこの部屋の絵を描いてんねん」

なるほど、部屋を上から見た図に見える。四角は家具の配置だ。次に、彼女の手はコタツの位置の外側に丸を描いた。

「これは、今あたしがいる場所」

タヌキらしき物は、人物の描写に移った様子。彼女の向かい側には私が座っている。次は私か…と思って見ていたら、その通り私の位置に丸が描かれた。しかし…その後の展開が変である。描き終わったペンは何を思ったのか、少し考えるようにその位置でピタリと止まった。そして、おもむろに私の「丸」の中にタテ、タテ、タテと線を描き始めた。漫画で言う所の「タテセン」である。

「?」…驚いて私が眺めていると、タテセンを描き終ったペンは今度はその上からヨコ、ヨコ、ヨコ…と横線を引き始めた。丸の中は格子状になった。そして次にナナメ、ナナメ、ナナメ…3回重ねた。これは、漫画でハーフトーンを手描きする際によく使う「3カケ」ではないか。ええっ!?と更に驚いて見ていたら、それは4カケになり、5カケになり…やがて私の位置の丸は真っ黒に塗り潰されてしまったのだ。

よーするに私は「タヌキの霊」にカケアミされたのである。これはどーゆー意味なの!?…と彼女を追及したかどうはもう思い出せないが、ハッキリとは説明してくれなかったと思う。何が言いたいんだ。私の事だけタタってやるとか、そういう悪い意味なのか。…しかし、あの手の動きと間合いを考えると、タヌキは私の位置を示した後、その人物にあまりにも霊感がないので、拒否反応を示したようにしか思えなかったのだ。つまり「こいつ(マル)…あ、こいつイヤ。(タテタテ)こいつダメ。(ヨコヨコ)こいつ嫌い。(ナナメナナメ)こいつ見えない。(逆ナナメナナメ)えーいもう塗ってやる!…(真っ黒)」そういう感じ。(- -;)なんか霊から「霊感ない認定」されたような気がした。

でもまあ…「見えない」私の考えなので、本当の所は分からない。カケアミはタヌキの仕業でなく、実は彼女が自分の意思で描いただけ…とも考えられるが、それも証明できない。そう言えば一度彼女にアシスタントを頼んだ時、やたらカケアミを細かく塗り潰してしまって使えなかった事がある。カケアミというのは、灰色の出ない荒いモノクロ2値印刷で灰色を表すための手段である。だから線は均等に、接触しないように引かないと印刷で潰れてしまうのだ。そこんとこ言ったんだけど…「私のカケアミが気に入らないの?」とか思って根に持ってた(^^;)可能性もないとは言えない。どうなんだろうなあ。彼女とはもう連絡が取れないので、タヌキの正体もカケアミの意味も、彼女のその時の心情も、私には謎のままなのである。

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